異世界転生小説

小説を久しぶりに書きたくなった時、iPhoneのメモに書くようにしているのだけど、こないだ1番気に入っていた物の大半が消えてしまった。悔しいので2番目に好きなものは残しておく。今年の夏休みはやる事がないので続きを書くかもしれない。

 

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3次会の帰り道でふと、今月いくら飲んだのか考えた。師走でもないのに毎週2回は飲んでいる。飲むと必ず2,3軒巡る。劇団員同士はこうやって交流を深めるんだよと、みんな誰かに教わるものだ。少なくとも俺の周りはそうだ。
1回2000円だし大したことねえよ、うちの母親なんて同じぐらいのランチ行ってるぜ。ハンバーグとか。と「劇団暗黒点」か「オオツカシアター」の誰かに言われたのを思い出す。本当に大したことない、だろうか。彼の母親も土日くらいは家で昼食を取るだろう。週に5,6軒行ってる俺たちは大したことない、で済ませていいのだろうか。
安く見積っても週5軒ペースで月に4万円。毎週1万円のリブロースステーキを食っているようなものだ。劇団員同士の交流とは、週1日のタダ働きをして、リブロースステーキを我慢してまで維持する価値のあるものだろうか。
結論からいうと価値はある。俺たちは役者の端くれであり、お互いの客だ。演技の勉強になる、という言い訳で誤魔化して観賞し合っているが、バカバカしいのは自覚してる。お互いのために作ってお互いのために観ているだけ。上澄みの上澄みのような才能だけが深夜ドラマの端役に選ばれるが、残りかすの俺たちは、お互いが役者であるために、役者と観客をこなしている。
都内のアルバイトだから何とかなる生活だ。その構成員も劇団も、都会のおこぼれで生きている。
目が覚めれば忘れる程度の殊勝な考えから逃げるように、路傍の酔っ払いに近づいた。大学で好きだった女に面影が似ていたのだ。寄りかかる電信柱に頬擦りする彼女は、間近で見ると眼鏡と髪型以外は別人だった。胸はあるけど好みではない。眼鏡と髪型で何とかなるなら役者向きだな。と溜め息をついたところでブレーキを強く踏む音がした。こんな道でスピード出してんじゃねえよと叫びながら振り向くとライトが顔に当たった。俺は死ぬんだと実感がわいた。これで4万円のことを考えなくて済む。

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